ありがたいことに、5月の下旬に一泊で上高地に行けることに。この時期は花も咲き出してどこを見ても楽しい時期。せっかくなので、目についた鳥と花を全部撮影する的なことをやってみることに。
初日の朝のバスは平湯のあかんだなから。当然始発だけど、上高地のバスターミナルに着くのは6時前になってしまう。この時期は朝5時くらいから鳥は見れるので、なるべく早く行きたいところだけど仕方がない。
バスターミナルに着いて、カメラと双眼鏡を引っ張り出す。山のほうからコマドリの囀りが聞こえる。過去には郵便局のすぐ隣の笹の中からコマドリの声がしていた時もあったが、今日は斜面の上の方。コマドリは探さずに先へ進むと、歩きだしてすぐに木の上から聞き覚えのある綺麗な声が聞こえてきた。目を凝らすとキバシリが木の幹をせわしなく動いている。目の前にも降りてきたけど、どんどん登って行ってしまい写真は撮れなかった。キバシリは結構囀りで気づくので、声を覚えておくと発見確率が格段に上がる。キバシリを見ている間にヒガラやコガラ、コサメビタキも目に入り、幸先の良いスタート。
河童橋に近づくと、コルリの声が山から聞こえてくる。コルリはここ数年、じわじわと上高地で確認できるようになってきた。雨上がりで穂高は霧に包まれていて、上の方だけ微かに見える。こういう景色も普段と違って良い。
梓川左岸のほうを歩いていくので、小梨平のほうへ。清水橋にて目の前に見える、昨年コガラが出入りを繰り返していた木の穴は、キツツキによって?3倍くらいの大きさになっていた。小梨平はキャンプ場の周りの笹が刈られていてこれではコマドリが寄り付かないなとは思ったが、これはクマが隠れる場所をなくすためなので仕方がない。目の前に降りてきたキビタキ♀などを見ながら清水川沿いに歩いていくと、ひと声だけコマドリの声がした。目を凝らすと対岸でコマドリが動いている。よく見ると2羽いて、雌雄のペアのよう。雌を見る機会のほうが少ないので、雌を頑張ってカメラで追いかける。
周りに競争相手がいないからか、ここの雄は全然囀らない。最初の一声だけしか聞けなかった。
小梨平を過ぎるとすぐに色々な花が出迎えてくれるので、耳だけは鳥の声に傾け、視線は下で先へ進んでいく。ニリンソウはたくさん花をつけているけど、太陽が出るまで花は閉じたまま。
歩いていくとコマドリの囀りが何か所かで聞こえる。全部遠いのでスルー。クロジが見れると嬉しいんだけど、全然声がしない。実はウグイスの囀りの写真が全然撮れていないので、近くで囀りが聞こえる度に探しはするのだけど、見えないものばかりで成果なし。昨年初めて認識したウスバサイシンの花を今年も見つけたけど、まだ暗かったので帰りに撮ることに。目線を足元から上げると、倒木の上にツバメオモトの良い株があったので撮影。
どんどん進んでいくと、コマドリの囀りが歩道の近くから聞こえる場所があった。遠くで鳴いているものも含めると3羽が囀っている。少し待つと目立つ場所に出てきたが、長時間囀ることはなく、数回囀ってすぐに下に降りてしまった。
普段ならここで粘るところだけど、この日は雨上がりで草に水滴がたくさんついており、乾かないうちに花びらが透けたサンカヨウを見たかったのでさらに先へ。昨年、小雨の日に上高地を歩いたのだけど、その時は全然透けていなくて悲しい思いをしたので、その時からチャンスがあればぜひ見ておきたいと思っていた。
↑ サンカヨウ
コマドリを後回しにした甲斐があり、無事に水に濡れてガラスのように透けるサンカヨウ花びらを見ることができた。図鑑には「水に濡れると花びらが透ける」などと書いてあるが、弾いてしまうくらいの少量の水だと透けないので、正しくは「花びらがずぶ濡れになると透ける」である。ちなみに、白い部分が見えないくらいに透けている写真も見るので、これでもまだまだなようだ。
目的は達成したので、先ほどコマドリを見た場所に戻る。逆光ながらさっきよりも近い距離で長時間囀る個体を見ることができた。この個体はどうも先ほどとは別個体のようだ。
ここで囀っているコマドリを見ていたら、カラ類がわちゃわちゃしているような声。近くを探すとキバシリを発見。よく見ると虫をくわえていったり来たりしているので、どうやら雛がいるよう。親が飛んで行った先を探すと…
なんと巣立ち雛も見ることができた。キバシリの巣立ち雛は初めて見る。今日巣立ったのか?という幼さで、二羽で団子になっていた。巣立ったばかりでもしっかり”キバシリ”で、しっかり木の幹を移動していた。まだ短い尾羽で体を支える姿が何ともかわいかった。
この雛の親はこの場所でずっと餌を捕っては運んでを繰り返していたため、コマドリを見ながらキバシリも目の前をうろうろしている贅沢な時間だった。相変わらず動きは速いのでなかなか写真が撮れないけど、それでも普段よりはだいぶまともな写真が撮れたと思う。ちなみに、雛は奥の方にいたけど、親は歩道の近くまで餌を捕りに来ていた。
キバシリの行動範囲が変わってきたところで早朝に見たコマドリに戻る。歩いて10秒。囀ってはいるのだけど、なかなか一定の場所で囀らない、コマドリらしからぬ?行動でいつもより手ごわい。近くには出てきてくれるので、見えるところに出てきたらひたすら連射。待っているといきなり目の前に出てきて鳴き始めるので、それが面白くて居座ってしまう。
10時くらいまでは割と高い頻度で姿を現してくれた。コマドリは日が昇って来てもまだまだ姿を見せていたけれど、日光が強すぎて被写体が光ってしまったり背景が明るくなって難しかったりするので、コマドリは置いておいてまだ行ったことのない徳沢まで歩きに行くことにする。
上高地は鳥が多いほうだけども、この時間になるとそんなに期待できないので花を探しながらのハイキング。RF100-500も持ってきたけど、替えるのがめんどくさかったので500mmF4のままで花も撮ることにした。
ニリンソウ、サンカヨウ、ツバメオモト等が咲いているのを撮りながら歩く。ハシリドコロやラショウモンカズラは咲き始め。ホンシャクナゲも咲き始めだったけれど、ピンク色がとても鮮やかだった。こんなに鮮やかな色をしているのは今まで見たことがない。咲き始めくらいが一番鮮やかなようだ。
これまで20回くらいは上高地に来ているけれど、明神より先には行ったことがなかったのでそこから先は初めての景色。ニリンソウが延々と道沿いに咲いている場所があったり、明神より手前ではあまり見ないオオバキスミレが咲いていたり、6月になるとベニバナイチヤクソウが咲いて見事であろう場所があったり。ただまあ少し違うだけで、基本的には明神までと変わらない気がした。季節が違うとまた違うのかもしれない。
鳥のほうはミソサザイやカワガラスがいたりコマドリの声が遠くから聞こえたりするくらいで、予想通り収穫なし。重いカメラを担いでやっとの思いで徳沢まで。
徳沢はニリンソウの群生が有名だけど、見た感じパッとしない。これなら道中か明神の手前で十分だと思った。休憩も兼ねてソフトクリームを食べながらアオチドリを探していたら植え込みみたいな場所で発見。これが見れただけでも来た甲斐はあったかな。でも自生なんだろうか…笑。
しばらく休憩して河童橋方面に戻ることに。徳沢を出る時にクロジの囀りを聞いた。
来た道をせっせと引き返していると、歩道にできた水たまりにカラ類が降りてきていた。見ているとコガラとヒガラとシジュウカラが周りにいて、次々に降りてくる。珍しくゴジュウカラも混ざっていて嬉しい。歩道の真ん中なので当然人が歩いてくるけど、かなり近づくまで逃げないし、耐えきれずに逃げてもすぐに戻って来て水浴びをしていた。
カラ類の水浴びを最後まで見てから先へ。今度は越冬明けのキベリタテハが姿を見せてくれた。夏から秋に発生する成虫はその名のとおり翅の縁の黄色がきれいなタテハチョウ。成虫で越冬し、越冬明けは写真のように黄色が退色して白くなるので、”シロベリタテハ”なんて呼ばれたりする。
徳沢~明神の3kmの道のりで写真に撮ったのはこれくらい。再び午前中のコマドリの場所に戻り、コマドリが出てくるのを待ちながら休憩。この場所のコマドリは朝と変わらず定期的に姿を見せてくれた。また、ウグイスが近くで枝移りをしながらずっと囀っていたのも嬉しい。囀っているウグイスの写真がこれまであまり撮れていなかったので、ありがたく撮らせてもらった。
コマドリは一通り撮ったし、同じ場所に出てきて囀りを繰り替えすだけだったので、早めに切り上げて宿に向かうことに。帰り道も足元に注意しながら歩いていたら、朝は見つけられなかった花も見つけた。
やはりゴーヨンを持って河童橋~徳沢の往復13kmはなかなか疲れる。小梨平までやっとの思いで戻ってきて、早朝にコマドリを見た場所で休憩していたら、♂がひょこっと姿を現した。写真は撮らせてくれたけど、やはりこの個体は全く囀らない。朝の一声で気づいていなかったら、この場所にコマドリがいることにも気付かなかっただろう。
17時前になると残っているのは宿泊の人だけになるので、静かな上高地を楽しめる。が、翌日も早朝から歩き回る予定なので楽しむ余裕はなく、さっさとお風呂に入ってご飯を食べていらない写真を消して(撮りすぎた)就寝。本当はもっとゆっくりしたいのだけど、今回は目的が生き物なので仕方がない。
翌日は4時頃に起床。7時間くらいは寝れたはず。軽く食べ物を口に入れて準備をして早速外へ。鳥に関しては昨日だいたい撮ったので、特にこれといった狙いは無いのだけど、せっかくなのでコマドリの場所に行くことに。
昨日とは違い、姿が見れそうな距離でクロジが囀っている。頑張って探してみたけど、飛び去る姿を双眼鏡で見ただけだった。
昨日と同じ道を歩いている途中、ニホンザルの群れとすれ違い、子連れの親も何頭か確認できた。上高地はニホンザルが多く、食べ物を奪ったりするわけでもなく人に無関心という感じで、害なく観察できるのは良いところ。ただし、糞がかなり落ちていて、しかも結構臭いので、踏まないように気を付けて歩かないと泣きを見ることになる笑。
今日は寄り道せずコマドリの場所までやってきたが、あまり声が聞こえてこない。囀りが聞こえても一声二声鳴くだけで、すぐに鳴き止んでしまう。知らぬ間に枯れ木の先端に止まっていたのを見つけた時も、何故かじっとしているだけで全く囀らなかった。そんな中、ミソサザイが移動しながら元気に囀っていて、少し遠かったけど写真が撮れる場所にもやって来てくれた。また、昨日は目立たなかったオオルリの声が高い所から聞こえる。コマドリを待っていると何度か低い場所に降りてきて、囀りながら虫を獲る。綺麗な青をしっかり見せてくれた。上高地でオオルリがしっかり見えるのは幸運かも。
ミソサザイやオオルリを見て楽しんでいるうちに日が登ってきて、やっとコマドリが囀りを披露してくれるようになる。昨日と同じソングポストで囀ったり羽繕いをしたり、いきなり目の前に出てきたりして面白かった。どうやら早朝が良いとは限らないらしい。
宿の朝ごはんの時間が迫ってきたので、河童橋方面へ戻ることに。コマドリは至近距離に出てきて囀ってはくれなかったのが心残りだけど、一か所でいろんな鳥を十分楽しむことが出来た。
戻る途中、森の奥の倒木にアカハラが止まっているのを見つけた。田代湿原の周りではそこそこ見られるけど、河童橋より上流ではあまり見る機会がない鳥。また、アカハラを見て少し歩いた場所でフクロウがゴロスケホッホと2声鳴くのを聞く。上高地では初めて聞いたので嬉しい収穫。
宿に戻りゆっくり朝ごはんを食べて、準備をしてチェックアウト。チェックアウト後も荷物は宿に置かせてもらえる。チェックアウト後も歩き回る予定だったけど、昨日の疲れが足に残っていたので、レンズを軽い100-500に付け替えて河童橋の周りをうろうろすることした。
というわけでこれ以降はR5とRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMで撮影した写真です。
まずは昨日行けていない岳沢湿原のほうへ。相変わらずここにはオシドリがいる。岳沢で見る魚はカワマス。外来種だけど、どんな経緯で上高地に入ってきたのやら。昨日までは苦労したウグイスが今日は目の前で囀っていた。
特に目的があったわけではなく、湿原を見に行っただけなのですぐにUターン。木道が終わった場所でコルリが大きな声を響かせていたのでちょっと探してみたら、何とか姿を発見。しかし顔が見えずお腹だけ。これではオオルリと言われてしまう笑。同じ場所でキビタキとコサメビタキもうろうろ。キビタキだけが一瞬目の前に来てくれた。せっかく100-500をつけているので、河童橋に戻るまでに足元のスミレも撮影。
まだ昼前ということで、河童橋を渡って小梨平を散策。いつもワサビの花を見る場所に行くと変わらず咲いてる。以前より少し勢いが減っただろうか。その上ではキセキレイが枝に止まってしばらく鳴いていた。小梨平は可憐な花が多く、植物好きな人は小梨平だけで一日過ごせるのではないかと思うほど。昼が近く鳥が動かない時間だし、時間もなくてあまり通りまでは行けないので花をたくさん撮影してきた。コマドリの声は全く聞こえず。
昼過ぎに日帰り温泉に入りに梓川右岸を少し下る。上高地は温泉に入れる場所が少なく、日帰り入浴でもべらぼうに高い笑。温泉に浸かって疲労が溜まった足を休めようと思ったけど、暑めのお湯だったので長く浸かるのはしんどかった。
温泉から出た後はバスターミナルに向かうため再び河童橋方面へ歩く。梓川の綺麗な水で水浴びをしているマガモを発見。羽ばたくのを待っていたらちゃんと羽ばたいてくれたけど後ろ向き。まあ翼鏡が見えたから良いか。それにしても水がきれい。
この辺りはアオジが多く、昼間にもかかわらず多くの囀りが聞こえた。数が多いと警戒心が弱い個体もおり、目の前で撮影できた。目立っていたので、観光客もスマホを向けて撮影していた。少し奥の方だけど、クロジも囀っていたのが意外だった。こんなところにもいるんだね。
河童橋の手前で丸見えのウグイスを見て上高地生き物探しを終わることに。1日目はゴーヨン担いで29000歩、2日目は100-500をぶら下げて22000歩も歩いた。足の疲労が凄いことになったけれど、花も鳥もたくさん見ることができて満足の2日間だった。これだけたくさんの生き物が見れて涼しくて景色も良くて山歩きも楽しめる場所はそうあるものではない。上高地は行くたびに違う楽しみ方ができる凄いところ。
まとめ
〇確認した鳥(33種)
オシドリ、マガモ、イソシギ、キジバト、ツツドリ、ジュウイチ、コゲラ、キセキレイ、ビンズイ、カワガラス、ミソサザイ、ルリビタキ、アカハラ、コマドリs9m3f1、コルリs1m1、キビタキs4f1、オオルリs3m1、コサメビタキ、ウグイス、メボソムシクイ、センダイムシクイ、エゾムシクイ、エナガ、ヒガラ、コガラ、シジュウカラ、ゴジュウカラ、キバシリ、アオジ、クロジs4、カケス、ハシブトガラス、フクロウ
〇確認した花
エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ニリンソウ、ヤマエンゴサク、フッキソウ、ラショウモンカズラ、コチャルメルソウ、コミヤマカタバミ、ハクサンハタザオ、ミヤマハタザオ、ツルネコノメソウ、ミヤマキケマン、ムラサキケマン、ズダヤクシュ、ツバメオモト、サンカヨウ、ツボスミレ、タチツボスミレ、オオタチツボスミレ、オオバキスミレ、アオチドリ、クリンユキフデ、ハシリドコロ、フデリンドウ、クルマバツクバネソウ、ワサビ、ツルシキミ、ウスバサイシン、コイワカガミ、エゾムラサキ、キジムシロ、アマドコロ、ホンシャクナゲ
〇他の生き物
カワマス?、ニホンザル、キベリタテハ、モンシロチョウ 等
↓ 昨年のものですが、動画もどうぞ!動画内でブラウントラウトとしているのはカワマスかも…